数年前。エンジンが壊れたことを知って、もうだめなんだろうなと思っていた。
意識不明になったことも、進む方向をかえることができなくなったことも、姿勢が保てず回転し続けたこともあった。
幾度となくトラブルに見舞われながらも、はやぶさの親はあきらめずにはやぶさと連絡を取り合う。
その数年後の2010年6月14日。帰ってきたのだ。あのイトカワまで、石を持ってくるというはじめてのおつかいを実行して。
背中にしょっていたカプセルを分離するように親に指示されたはやぶさはそれを実行。はじめてでさいごのおつかいの任務の終了だった。
その後地球に向かって落ちる、燃え尽きて終わる。はずだった。
親は最後に、背を地球に向けていたはやぶさにむかって「振り向くように」と伝えた。
燃えてなくなる前の最後のおつかいは、
故郷の地球を見ること。
はやぶさの目(カメラ)は、カプセルと反対のほうにあったから。
無事、このおつかいも果たした。はやぶさが見た地球の写真を親に送って、はやぶさは消えた。